欧文タイポグラフィについて学んでみる【書体の種類と移り変わり】
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第3回目の本記事でも、引き続き欧文のタイポグラフィについて学んでいきたいと思います。今回はフォントの見た目となる書体についてまとめていきたいと思います。この書体にはいろんな種類が存在し、フォントの歴史とともに大きく形も様々に変化してきました。その移り変わりを書体と合わせて紹介していきます。
まずは、文字の要素にセリフと呼ばれるヒゲの装飾がついたセリフ体のグループです。中でも「ベネチアンローマン」と呼ばれる種類は、古代の石碑に書かれた文字をモチーフにされており、古く歴史のある印象を与えるものが多いです。この書体は「e」や「o」が右上を向いた少し傾いたデザインが特徴的で、文字の要素もどこか荒っぽく直線的な形になっています。神秘的な印象もあり、デジタルよりはポスターなどの印刷物に相性がいいのではないでしょうか。
ベネチアンローマンからの系譜を受け継いだ「オールドローマン」の種類では、無骨な印象を残しながらも細部のディティールがより洗練され少し曲線的に描かれるものが増えてきました。この書体は伝統や歴史のあるイメージを与えるのに効果的で、ブランディングのデザインに採用されるケースもよく見られます。
続いては「トラディショナル・フェイス」と呼ばれる分類です。セリフ体の中ではいわゆるスタンダードなものになり、文字自体の形も曲線的な構成で、視認性や可読性にも優れたバランスの良い書体になります。ベネチアンローマンや、オールドローマンと比較すると、より柔らかく品のある印象を感じるようになります。ボディコピーだけでなく、見出しやキャッチコピーなど使いどころは万能です。
トラディショナル・フェイスからさらに形が代わり、「モダン・フェイス」と呼ばれるものが誕生しました。セリフの要素は持ちながらも、大きな変化として、セリフの形がブラケットセリフからヘアラインセリフと呼ばれるものに変わりました。(参考記事「欧文タイポグラフィについて学んでみる【文字の構成】」)縦方向のラインは太く、水平方向のラインは細く、よりメリハリのあるデザインになります。この種類のフォントは女性らしい上品でエレガントな印象を与えるのに効果的です。
セリフ体がもつセリフの形が、より太く大きく変化したのが「スラブセリフ体」と呼ばれる種類になります。見た目の印象もガッチリと安定感や迫力が増す印象を受けます。男性的であったり、カジュアルさやレトロな雰囲気を持っている書体になり、ロゴデザインや広告のキャッチコピーなどでもよく使われます。
セリフ体に似ていますが、セリフがとても小さく控えめな形になっているのが「タイニーセリフ体」です。後述するサンセリフ体とセリフ体の中間のような印象を受けます。スタイリッシュな雰囲気に加えて、セリフ体の上品なイメージを持ち合わせた書体です。飲食店のロゴなどでよく見かけたりしますね。
これまでのセリフ体とは大きく異なり、セリフが一切ないものが「サンセリフ体」と呼ばれるグループになります。その中でも初期に現れたのが「グロテスク・サンセリフ」という種類になります。文字の形が直線的で無骨な印象を受けます。細部のディティールもフォントによって異なりますが、どこか荒っぽいイメージを感じますね。
先ほどのグロテスク・サンセリフ体がより洗練されたのが「ネオグロテスク・サンセリフ」になります。曲線が強調されるようになり、細部の要素も収まり良く、スマートな印象を与えます。文字としても視認性よく完成度の高い形になり、キャッチコピー、ボディコピー、ロゴタイプなどいろんな場面で採用されています。
これまでのサンセリフ体から、より曲線が強調され温かみのあるデザインへと変わっていったのが「ヒューマニスティック・サンセリフ」と呼ばれる種類のものです。フォントによって様々なデザインがあり、幅広い種類がある分類でもあります。企業のブランディングによく使われることが多く、文字の形が持つイメージを主張された書体が多いのも特徴です。また、女性らしいイメージを持つフォントもよく見かけます。
文字の形が図形のような幾何学的に変化していったものが「ジオメトリック・サンセリフ」という種類になります。近未来的でクリエイティブな印象を与えるものが多く、特徴的な形を持つ文字もたくさん増えています。デザイン要素が強いので、ロゴタイプにも相性がよく、業種問わず採用されているケースも多いですね。
中世のヨーロッパで使われた書体で、独特な形をしている「ブラックレター体」です。その名の通り、黒色の文字色で書くと全体が黒く見えるくらいに要素が占める割合も多く、他の書体と比べてインパクトが強い特徴があります。ゴシック的な世界観でブランドロゴに採用されているのもよく見かけますね。
続いてはいわゆる筆記体の書体となる「スクリプト体」のグループです。その中にある「フォーマル・スクリプト」は中でもクラシックな印象を持つ、美しい形の書体で、流れるような筆の運びで書かれたような特徴があります。その名の通り、格式高い場面での相性がよく、高級で洗練された雰囲気を作り出すことができます。
フォーマル・スクリプトを少し崩した形になるのですが、文字の要素でハライの部分がその名の通りカリグラフィーの技法で書かれたのが「カリグラフィック・スクリプト」と呼ばれる種類です。文字の要素が植物の蔦のようで柔らかく曲線的な大きい筆運びが特徴です。少しカジュアルな雰囲気を感じながらも、上品な印象を与えられる書体です。
筆記体であるスクリプト体の中でも、デザイン性に富み、個性的な形を持つものが「カジュアル・スクリプト」という種類になります。フォントによって様々なバリエーションや形が存在し、与える印象や書体がもつ雰囲気もそれぞれ異なります。装飾的に用いられることが多く、表現したデザインにマッチした書体を選択するのがポイントです。
文字自体が手書きで書かれたような形をしているのが「ハンドライト体」という種類です。その名の通り、手書きで書かれた不規則な形をしているものもあれば、クレヨン、チョーク、マーカー、鉛筆といった、素材感を持った書体など様々なバリエーションがあります。デザイン性の高い書体なので、キャッチコピーなどに使われたり、一部のデザイン素材として採用されることもあります。
今回は、欧文タイポグラフィの様々な書体の種類について、書体の変化の移り変わりと共にまとめていきました。ここに登場した中でも50種類近いものがあり、デザインにマッチした書体や自分の好みの書体を探してみるのも楽しいですね。これら書体の分類を理解しておくことで、デザイン制作においても、より効率的で完成度の高いデザインを作ることができるのではないでしょうか。ぜひ覚えておきたい知識ですね。 (こちらの記事もどうぞ) 欧文タイポグラフィについて学んでみる【文字の構成】 欧文タイポグラフィについて学んでみる【フォントファミリー】
書体の種類を分類別に見てみる
欧文フォントには、それぞれ見た目の特長や誕生した時代別に下記のように分けることができます。デザインに活用するときも、この種類を覚えておくことで、効果的に使い分けることができるので、是非頭に入れておきたいですね。 1. セリフ体(ローマン体) - ベネチアンローマン - オールドローマン - トラディショナル・フェイス - モダン・フェイス 2. サンセリフ体 - グロテスク・サンセリフ - ネオグロテスク・サンセリフ - ヒューマニスティック・サンセリフ - ジオメトリック・サンセリフ 3. タイニーセリフ体 4. スラブセリフ体 5. ブラックレター体 6. スクリプト体 - フォーマル・スクリプト - カリグラフィック・スクリプト - カジュアル・スクリプト 7. ハンドライト体 8. ディスプレイ体 それでは、これらの分類について詳しく色んな書体を見ていきます。【セリフ体】ベネチアンローマン

【セリフ体】オールドローマン

【セリフ体】トラディショナル・フェイス

【セリフ体】モダン・フェイス

【スラブセリフ体】

【タイニーセリフ体】

【サンセリフ体】グロテスク・サンセリフ

【サンセリフ体】ネオグロテスク・サンセリフ

【サンセリフ体】ヒューマニスティック・サンセリフ

【サンセリフ体】ジオメトリック・サンセリフ

【ブラックレター体】

【スクリプト体】フォーマル・スクリプト

【スクリプト体】カリグラフィック・スクリプト

【スクリプト体】カジュアル・スクリプト

【ハンドライト体】

【ディスプレイ体】
デザインの世界観や目的に合わせて、独自のデザインを施された書体が「ディスプレイ体」という種類になります。基本的にはこれまでのカテゴリに含まれないものは全てこのディスプレイ体に分類されるということになります。その分、様々な種類があり、特徴的な書体がたくさん存在します。ディスプレイ体の中でも、デザインのタイプ別にいくつか区分けもできるのですが、こちらについてはまた後日別記事にて詳しくまとめていきたいと思います。今回は、欧文タイポグラフィの様々な書体の種類について、書体の変化の移り変わりと共にまとめていきました。ここに登場した中でも50種類近いものがあり、デザインにマッチした書体や自分の好みの書体を探してみるのも楽しいですね。これら書体の分類を理解しておくことで、デザイン制作においても、より効率的で完成度の高いデザインを作ることができるのではないでしょうか。ぜひ覚えておきたい知識ですね。 (こちらの記事もどうぞ) 欧文タイポグラフィについて学んでみる【文字の構成】 欧文タイポグラフィについて学んでみる【フォントファミリー】
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